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2016.08.01

バーテンダーの酒の日々 Vol.5

先日、部屋でゆっくりと独り酒に興じていました。肴は、TVでもYouTubeでも池波正太郎でもなく、4回に渡り書かせて頂いた稚私な駄文でした。その駄文を読みながら、幼い自分を、他人の様に思い出していたのです。あまりにも幼稚な自分にしか出会えなかったので、他人事にして思い出そうとしていたのです。

ビールからワインに変わり、ウィスキーになっていた時、「あれ、今の自分と変わってねぇな」なんて思いはじめました。早く大人になる事を切望しながら、大人達に失望する。あの頃と同じ思いが、今もはっきりとあるではないか。最近、特に腹立たしく思う事は、自分をふくめた大人達の愚行に対する事ばかりではないか。ウィスキーをあおりながら、またまた腹が立ってきました。

数か月前、当旅館の日本酒選定の為に、福島の蔵元さんに向かう新幹線に乗っていました。となりには、同年代とおぼしき、スーツ姿のおじさんが座っていました。少し時間のかかる車中なので、軽く眠ろうと、目を閉じていました。すると、間もなくとなりから大きな笑い声が聞こえてきたのです。何だ何だと目を開き、となりのおじさんを見ると、芸人達がはしゃぐ姿を映すタブレットにイヤホンを差しながら、まるで自分の部屋に居るが如く、大笑いをしていたのです。びっくりしました。私には、その行為のすべてが、幼く、ひどく滑稽に見えたのです。そういえば、電車内で、スーツ姿のおじさん達が、一心不乱にケイタイゲームに興じている姿を良く見かけるなとは思っていました。その度にゲンナリしていたのですが、まさか大の大人が、新幹線の中で、芸人達のはしゃぐ様を見ながら大笑いするなんて。恥というものを知らないのだろうか。こんな幼い大人から、若い人達は何を学べばいいのだろう。場所を選ばずにケイタイゲームをピコピコとマヌケ面して遊んでいる大人達から、若い人達は、何を得られるのだろう。電車の中でマンガを読む大人達をバカにした、あの頃の自分がよみ返りました。

しかし、となりのおじさんの愚行は、更にエスカレートします。何と、今度はケイタイで通話をはじめたのです。「電車内での通話は、ご遠慮下さい」もう、何年も前からくり返しインフォメーションされている電車内でのルール。これを大の大人が平然と破りやがったのです。さすがに、声をかけさせてもらいました。「はぁ、すみません」そう言って席を立ったのですが、本当に、こんな大人から、若い人達は注意なんか受けたらダメですよね。聞く耳なんか持たなくていいですよ。仕事の中では、きっと、ルールを上から押しつけているくせに、自分は最低限のルールさえ守れない。同じ大人として、本当に恥ずかしくなりました。

酒場では、こんな事もありました。

その日は、10数年ぶりに会う、自営業の友人と、20代の、友人の会社の従業員2人の青年と4人で酒席を供にしていました。はじめは、青年2人を置き去りにしながら、友人と近況報告や、若かりし頃の話で盛り上がっていたのですが、酒がまわると、友人は青年2人に説教をはじめたのです。「今の若い奴は、夢がないからダメだ」ドヤ顔の友人は、鼻息荒く、答えに窮する青年2人をにらみつけながら、口から泡を出し力説していました。

こいつは何てマヌケなのだろう。

夢や目標なんてものは、持っていた方が「楽」だから持ちたいだけのものではないか。金が湯水の様に湧いてきて、何も仕事なんてしなくていいのなら、俺は堂々としない。旅でもしながら、気ままに生きていたい。夢や目標なんていらない。でも、そんな事がある訳もないから、明日起きて、何かをしなくてはいけないから、夢や目標を持って、無理やりにでも朝起きる。夢をドヤ顔で語ったり、自慢するなんて、「俺、なまけもの也」と大きく言っている愚かな事だ。本物のマヌケの行為だ。夢や目標は、自分の中で密やかに持つものだ。しかもこいつは経営者。責任者だ。「夢を持て」ではなく、「夢を与えて、楽に生きていく方法をプレゼントします」だろ。「夢を持たせてあげられなくて、ゴメンなさい」だ。縁あって自分と仕事をしてくれる若い人達に夢を与えるのは、責任者の仕事だろ。大の大人が若い人達の“せい”にして、みっともない事を言うな。こういう奴に限って、作業を覚えるのが少し遅かったりする若い人に「お前はダメだ」とか言うのだ。個性それぞれの人達の長所と短所を把握して、作業ができる人にしていくのは、誰の仕事だ。自分の未熟さを人のせいにするな。

みっともない大人2人。大声でののしり合い、ひっぱたき合ったりしながら、見事に酒の席を乱し、青年2人に多大な迷惑をかけてしまいました。もちろん、2次会のカラオケでは、仲良く4人で盛り上がりはしましたが。多分。


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カクテル「ラスティネイル」

「錆びたクギ」という名のカクテルの歴史はまだ浅く、第二次世界大戦終戦後の1950年に、ニューヨークの「21クラブ」というバーで誕生しました。ウィスキーとドランブイだけというシンプルな組み合わせながら、一気に世界中で人気のカクテルとなりました。当時の「21クラブ」のオーナーは、バランタインのオーナーでもありましたので、ウィスキーはバランタインフィネストがオリジナルなのかもしれません。

複雑でスパイシーなバランタインとハチミツとハーブとスコッチがベースのドランブイ。疲れた大人達を癒す甘さを持つ、魅力的なカクテル。世界中のバーで、シガー片手に〆に飲む「ラスティネイル」は、現在も大人気のカクテルです。

「ラスティネイル」イギリスの俗語で「古めかしいもの」。

「ラスティネイル」は、古の大人達が大切にしてきた「古めかしくも、まぶしい大人の品格。ジェントルマンシップ」を教えてくれながら、品格を守る為に疲れ切った大人達を、優しく静かな眠りにいざなってくれる様なカクテルなのです。

2015年12月にあうら橘入社。バーテンダー歴25年。
ワイナリー・酒蔵での酒造りの修行後、ソムリエ・利き酒師の育成にもたずさわる。
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